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臼歯の形態について(ドリオピテクス)
こんにちは。伊藤デンタルオフィスの伊藤です。
今日は奥歯(臼歯)の形態の話です。
奥歯は臼歯と言っていわゆる物を噛み砕く歯です。いくつかの咬頭と言う山の部分と裂溝と言う谷の部分あり、それが上下で山と谷の部分が噛み合って物を噛み砕いています。
ですのでシャープな形態の方が咀嚼能率が高くなります。咀嚼能率が高いと言うことは小さな力でも物を粉砕できると言うこと。つまり歯に大きな力がかからないと言うことです。大きな力がかかると形あるものは全て壊れます。
小さな力で物を噛めると言うことは歯や顎にも負担がかからず噛む筋肉(咀嚼筋)にも優しいと言うことに繋がります。
奥歯の形態は見た目以上に重要だと言うことを理解していただけましたでしょうか?
そしてその奥歯の中での特に重要なのが第一大臼歯です。
下の奥歯 第一大臼歯(6歳臼歯)は必ず咬頭(山)が5つあります。
これは人の祖先であるゴリラやチンパンジーの歯もほぼ同じ形態をしています。
この歯の形態をドリオピテクスと呼びます。
1300〜800万年前からこの形態は進化の過程の中にあっても失われる事なく維持されてきた形態なのです。
そこにはとても重要な役割と言うか意味があるのだと思います。
ただ現時点ではその意味が何なのかは解明されていません。
私はこの意味を解明したいと思い全ての歯の形態と咬合接触状態からある仮説をたて、それを2006年 日本顎咬合学会誌に論文として発表しました。
当時かなり反響があったのもも内容が今までの歯科会の咬合理論を覆す壮大なものだったので理解してもらえませんでした。が、いつか理解してもらえると信じて今後もその解明に取り組んで行く所存です。
歯の複雑な形態が意味するものにはまだまだ多くの分かっていない機能があると思います。
ですので変に形を変えることなく天然歯に近い形態を出来る限り再現する事が解明されていないだけに大変重要だと思っております思っています。
(注) 写真は全て咬耗していない天然歯(30歳女性)のものです。
形態をわかりやすくするため、石膏模型にして拡大しています。
本来、歯はこんなにシャープな形態をしているのです。